<戻る

糖尿病新薬が治療に使われるまで

2002.9.2

   糖尿病薬剤に限らず多くの新薬は製薬メーカーの研究室で開発されて、患者さんに使われるようになるまで10年から18年かかると言われています。しかし偶然に新薬が誕生することがあります。例えば抗生物質として多くの人の治療に使われていた薬が低血糖を起こすことが分かったとか、肥満治療剤として開発した薬に血糖降下作用のあることが分かって糖尿病治療剤として使うことにした薬もあります。

  大方の薬は大学や製薬メーカーの研究室で、植物、土壌中の菌、海洋生物から採取した成分を化学合成して開発することが多いようです。この研究室で開発された薬物が治療薬となるまでにはかなり長い年数を必要とします。その理由は薬物の安全性と有効性を多方面から科学的に公正な立場で証明しなければならないからです。これを臨床試験といいます。この試験には何億円の費用と10年以上の期間と、何度も動物実験を重ねて、そして何千人もの正常人と患者さんの治験参加により確認されます。

  多くの患者さんの同意をえて開発薬剤の効果と安全性を検査で調べることを治験といいます。治験は新薬が多くの患者さんの治療に使われるようになるためには極めて大事な試験です。厚生労働省も新薬が早く治療に使われるように政策を工夫しています。1997年に「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(新GCP)」が厚生労働省から発令され、世界各国と共通したやり方で新薬を製剤化することにしました。

   それによると治験は3段階からなっています。第一相試験は百人位の健康人にまづ最初に試験されます。第ニ相試験は数百人の患者さんに薬効果と安全性と最適使用量を長期間にわったって調べます。第三相試験ではさらに多くの患者さんを対象として、従来からある薬と比較して有効性があるか否かを長期間にわたって調べます。このように新薬が市場に登場するまでには多くの試験でその効果と安全性が確認されます。

  それまでのデータが厚生労働省に提出審査され、製造販売の許可が降りるまで約一年半位かかります。

  私共の病院ではこれまで多くの糖尿病内服剤や超速効型インスリンなど新しい製剤治験をおこない現在の糖尿病治療の進歩に多少なり貢献してきました。最近も体内脂肪を分解する薬とか、神経障害治療薬の治験を行っており21世紀に向けての糖尿病治療薬の開発のお手伝いをしています。患者さん方にはこのような主旨をご理解頂き治験に参加して下さることをお願いいたします。尚、参加された方には受診時の検査費用一部の免除と、謝礼を出しております。