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糖尿病患者に癌が多い?

2003.2.13

 日本国民の死亡原因は第一位が癌で心疾患、脳血管障害の順になっていますが、癌死亡率は心脳疾患と比べて約2倍高くなっています。この死亡順位は糖尿病患者にもそのままあてはまります。糖尿病と癌に関する研究は少なく、糖尿病患者の癌死亡率の全国集計は数年に一度で調査されています。最近名古屋市を中心とした中部地方における癌死亡率の疫学調査が発表されました。日本全体のほぼ中央に位置する地域ですから日本全体の平均的データと考えて差し支えないと考えます。この報告論文をみると死亡総数に占める各疾患の死亡割合(死亡率%)を、糖尿病患者と日本国民一般とで比較しています。

 

 

糖尿病患者

日本人一般

39.1% 

30.7

腎臓障害

20.3%   

1.8% 

感染症

11.6 %   

 9.0% 

心疾患

8.7% 

15.2% 

脳血管障害

8.7 % 

13.8% 


 糖尿病患者の約4割近くが癌で亡くなることとなり、この割合は一般の人よりやや多い(1.3倍)です。癌の種類から糖尿病患者の死亡率を一般人のものと比べると、大腸癌と肝癌が多くなっています。しかもこれらの癌は年毎に増加していく傾向が明かに示されています。東京都済生会中央病院の報告では糖尿病患者には膵癌と肺癌が多いといっています。大腸癌と食事のとり方との関係は明かにされており、高カロリー食や高脂肪食で癌が高率に発病するといわれています。さらに洋食、高脂肪食や運動不足によるインスリン抵抗性が大腸癌の危険因子であるとする学説もあります。

 糖尿病患者に膵癌が多いという説は以前からありましたが、東北大学の全膵癌患者の52.3%が糖尿病をもっていたと報告しています。糖尿病があってさらに喫煙歴があると膵癌の危険度が2倍になるといっています。日本糖尿病学会の癌併発全国調査(2000年度)が発表されていませんが、多くの医療機関から発表された肝癌、大腸癌、膵癌の死亡率の高いことは明かです。ちなみに当病院における昨年の癌併発患者さんの内訳を調べました。
    

     肝 癌 2名、大腸癌 3名、肺 癌 3名、乳 癌 1名
   
子宮癌 1名、胃 癌 1名

 これらの癌発病を防ぐには「癌予防のための12カ条」とか「健康日本21」のライフスタイルを実行することですが、糖尿病の正しい療養生活を守っていれば十分と思います。