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今年の「日本糖尿病学会」開かれる

2004.6.4


  毎年5月は日本で、6月はアメリカで糖尿病学会が開かれています。今年の国内の学会は東京女子医大教授で糖尿病センター長である岩本安彦先生が学会長として、主宰されました。学会の主題を「糖尿病根治の時代への扉を開く」として、各部門の専門家が世界中から集まり総数8500名の国際学会並みの大会となりました。
 

 学会のハイライトテーマはやはり糖尿病遺伝子と再生医療です。しかし、いずれも基礎研究段階の話で、人間を対象とした研究発表まで至っていないのが残念です。この二つの主テーマは糖尿病を根治させるための鍵となるものです。一方では21世紀の国民病といわれるほどに糖尿病人口が増加している(毎年10万人)現状を見過ごすわけにはいきません。岩本教授はその原因を生活習慣の欧米化と高齢化社会と考え加齢に伴う糖尿病発病を討論テーマとしました。加齢による身体の変化は体表面のことばかりではなく身体内部も年をとっていきます。従って糖尿病については膵β細胞も徐々にインスリン分泌が障害されてきます。また同時にインスリン抵抗性も加齢により大きくなります。さらには細胞の内部でもブドウ糖処理能力が低下していくようです。そして高齢糖尿病患者さんを治療していくには若年、中年糖尿病とは異なる観点で、高齢者向けのテーラーメイド医療が必要と勘案しています。すなわち、動脈硬化性合併症がこれから多くなるための予防対策を考えておくこと。次に身体機能、認知機能、心理感情機能の低下が治療を妨げるので、この点を考えて全人的に治療をしていくことが必要であるとしています。
 

 次に教育入院の治療と教育効果を調べた研究報告です。当病院では今年3月を最後に2週間教育入院システムを廃止することは昨年この欄でご説明しました。その代わりに短期入院(一週間または二泊三日)で教育、検査、食事体験、血糖値強化治療などの入院目的をはっきりして入院してもらうやり方をとりました。この大胆な試みには一抹の不安がありました。しかし今年の学会では二泊三日の教育入院は二週間入院と比べ教育と治療効果が1年間の観察では大差のないことが数ヶ所の病院(京都日赤、神戸逓信、横浜国立など)で報告しておりひと安心したところです。
 

 次に当病院でも試みる予定にしていた家庭、職場でとる一日の食事を、デジカメで撮って栄養士が評価するというやり方についての研究報告が三病院でありました。デジカメを用いる前のヘモグロビンA1c 7.3%は使用することにより、三ヶ月後ヘモグロビンA1c6.7%に低下しています。面白いことは7名の栄養士が同じデジカメ画像を見た時の栄養計算がそれぞれバラバラで、いづれも二割から三割カロリーを低く計算していたことです。盛り付けした食事写真は平面的に眺めており、油、砂糖などの調味料の使用量が正確に推測できないためらしいです。
 

 最後に天理よろず相談所病院と名称も面白いですが、発表題名も「笑いによる食後高血糖の抑制効果」というものです。要点を述べますと、食事後に運動、安静、漫才ビデオ鑑賞の三項目を毎日3日間やったときの血糖値上昇を比べたものです。運動では当然血糖値はよく下がります。笑うことは食後血糖上昇を抑える効果のあることが示されました。
 

 ここに示した発表は本学会の極く一部で、かつ当病院の診療に関係のあるもののみをお話していることをご承知おきください。