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平成18年日本糖尿病学会(49回)に出席して

2006.6.13

  今年の糖尿病学会は5252627日に東京国際フォーラムで開催されました。今年は東京慈恵会医科大学内科教授 田ジマ尚子先生が主宰されました。発表演題数は1500題で韓国、中国をはじめ東南アジア諸国の糖尿病研究者からも発表があり盛大に行われました。最近の学会は日本国内の研究者ばかりでなく、アジア諸国から多数の研究者が参加し英語による発表が多くなりました。

  当院で発表した演題は「糖尿病悪化叉は改善していく時のヘモグロビンA1cに係わる朝食前及び各食後血糖値の寄与」でした。この研究は3年前に当院の多くの患者さんに自己血糖測定を依頼し、その結果をまとめたものでご協力下さった皆さんにお礼を申し上げます。データー内容については改めてこの場所でご報告したいと思っています。

  学会の内容を述べますと、最近話題となっているメタボリックシンドロームがシンポジウム、セミナー、一般演題でも数多く発表され現代の多彩な社会生活の裏側で身体異常の起こってきていることを示しています。その他ではアジアにおける糖尿病の実態と特徴、膵島移植の現状と将来、腸管ホルモンの糖尿病治療への応用、食後高血糖の病的意義、糖尿病と癌など興味深い話題がありました。

  糖尿病学会は年々規模が大きくなり、日本の糖尿病臨床医や研究者に加え外国人研究者や糖尿病療養指導士(CDE)の研究発表が多くなってきています。このことは糖尿病患者さんの療養や治療にいかに様々な分野の専門家が係わっているかを示すものです。

  糖尿病研究は毎年確実に進展はしていますが、糖尿病が完治するという大目標に到達する道のりはかなり遠いという印象をもったことも否めません。

                              (院長)

 

  初めに読売ホールで行われた市民公開講座のメインテーマ(糖尿病治療をうまく受けるコツ)には全国からの糖尿病患者さんが多数参加していました。

 「かかりつけ診療所と糖尿病専門クリニック、総合病院の連携をうまく受けるコツ」に出席しました。最近では、普段の体調管理はかかりつけ診療所で相談し、糖尿病専門クリニックでは糖尿病教育や栄養指導、薬物調節を受け、総合病院で普段できない合併症の検査(たとえば眼科、皮膚科、循環器科受診)を受けるといったように患者さん自身が、受診目的をはっきりさせて医療機関を使い分けるように薦めていました。また糖尿病専門医不足とともに、糖尿病療養指導士の資格を持った栄養士や薬剤師も不足し糖尿病患者さんに十分な教育(学習)の機会が少ないため、地域ぐるみで集団栄養指導を行い、診療所に栄養士を派遣するなどの試みについても話されていました。

 2つ目の講義は「医療機関で糖尿病治療を上手に受けるコツ」についての講演です。そこでは医者と患者の会話には道具が必要と銘うって1.食事記録(写真) 2.自己血糖測定手帳 3.万歩計 4.自己血圧記録手帳を使って医者に自分の情報を発信することが大切と話されていました。つまり、「糖尿病」に対して医者と患者がよく相談し治療を決めることが大切、そのためには患者情報をうまく医者に伝えてくださいと言うお話しでした。

  医者、患者にとって関心のあるテーマは、糖尿病再生治療についての講義です。いかにインスリンを作る細胞(つまりすい臓のB細胞)を人工的に作るかについての研究です。1つはすい臓の腺房細胞(本来インスリンは分泌しません)からインスリン分泌細胞を作ろうという研究です。インスリン分泌細胞はできるようですが、分泌されたインスリンの血糖を下げる力は正常のインスリンと比べると400〜1000分の1と、かなり血糖降下作用は弱いようです。また骨髄移植によりすい臓B細胞を再生するという報告もありました。これは骨髄に放射線をあてることによって骨髄抑制がおこり、骨髄が回復するときにB細胞の再生が起こるというものです。

  このように市民が受けられる楽しい講座(日本を代表する糖尿病専門医が行う市民向けの講義や、料理研究家の有元葉子さんやタレントの榊原郁恵さんの食事に関する話、落語家の林家正蔵さんの落語など)から国内外の最先端の研究までさまざまな催しがありました。皆様も一度参加されてはどうですか? 来年は仙台で開催されます。

                    (糖尿病専門医 坂井医師)