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白内障

  2007.3.11

今回は眼について、特に白内障についての話です。

 眼というのはよくカメラに例えられます。カメラでいうフィルムに当たる部分は眼の奥の膜(網膜)、絞りにあたる部分は茶目のところ(虹彩)、それでレンズにあたる部分が水晶体といわれる部分です。その水晶体が白く濁ってしまうのが白内障という病気です。

 皆さんは白内障というとどのような印象をお持ちでしょうか?「年寄りの病気?」とか「進行すると失明する?」とか。それでは白内障の原因はというと、年齢によるもの(加齢性)・ケガ等によるもの(外傷性)・病気によるもの(症候性)等があります。特に糖尿病においては、その白内障の発生率が高く進行も糖尿病以外の人に比べると早いことが知られています。その内容ですが、アルドース還元酵素(AR)というものがあり、これによって糖が糖アルコールに変わり、これが細胞内に貯まり、水晶体の繊維化が起こり白く濁ってしまい白内障の原因になるという説です。次に年齢を重ねることによってアスコルビン酸(ビタミンC)が低下し水晶体が混濁していくと考えられていますが、糖尿病でもこのようなことが起こっているようです。また、水晶体の上皮細胞(周りの皮にあたる部分)の減少などが言われています。ただ、これらはまだ研究段階であり、一つの原因ではなくこれらが複雑に関わり合っていると思われます。

 次に症状はというと、まぶしさ、特に冬の天気のいい日などはまぶしくて目を開けられないとか路肩の雪と歩道の段差が分からないという声を聞きます。また、視力も落ちますがこの見え方は、‘もやっと’して見えにくいという方が多いです。白内障による痛み・かゆみはありません。

さてそこで治療ですが、現在では手術が唯一の治療法です。手術は、数年前までは強角膜切開(白目と黒目の境を少し切る)・水晶体乳化吸引(水晶体の濁った部分を吸い取る)・人工水晶体挿入術が主流でしたが、現在は角膜小切開(黒目の端に小さい穴を開ける)・無縫合(縫わない)が主流です。これによって日帰り手術が多くなりました。ただ糖尿病患者ではコントロールが悪いと傷の治りが良くないので必ずしも日帰り手術が可能とは限りません。さらにその時期ですが、白内障は手遅れになって失明してしまうことは普通ではありません。自分で仕事上・生活上不自由感を感じたときが手術時期になります。しかしながら、糖尿病においては血糖コントロール、糖尿病の状態が問題になります。つい先日の糖尿病眼学会でも問題になっていましたが、ヘモグロビンA1cのコントロールが悪いと白内障の手術をきっかけにして糖尿病網膜症が悪化することがあります。特に黄斑部(ものを見るうえでの一番中心の重要な部分)が、腫れてしまいせっかく白内障の手術をしても、視力がよくならないで逆に悪くなってしまうこともあります。ですから、必ず内科と眼科の両方にかかってよく相談することが重要です。

最後に、将来は注射器で水晶体の濁りを吸い取ってきれいな液を注入するとか、先のARをブロックする薬や高濃度ビタミンCなどで白内障を治療するなどの夢のような治療が出来るようになるかもしれません。みなさん優秀な科学者に期待してください。

(文責:永坂嘉章)