<戻る

 

糖尿病といかに付き合うか

 19.9.23

 糖尿病患者会「にれの木会」主催の「糖尿病講演会」が9月8日行われました。その時にお話したテーマの要旨をお話します。

  糖尿病の治療と療養の目標は合併症を防いで人生最後まで元気で、長生きすることと言われています。日本人の平均寿命は男79才、女85.8才ですから、ひとまず人生80年を目標に健康で暮らすことです。80才になったら、次に100才を目標にしましょう。80才は人生峠の頂上にあたり、それを越すと下り坂に入り体調よく生活できるといわれています。ですから、糖尿病患者さんは療養などと考えずに長生きするにはどうすると良いのかと考えるのもひとつのやり方と思います。

  現在日本で100才以上の人は2万8400人います。しかし一般国民の長寿者の生活振りはそれほど細かく報道されてはいません。名古屋のきんさん(107)、ぎんさん(108)、鹿児島の泉重千代さん(120185,世界長寿者記録者2番目)らの実生活はあまり明らかにされてはいません。ちなみに世界記録長寿者1番はフランスの女性122164日です。人間の限界寿命は120才といわれていますから、100才になった時にはもう少し手を伸ばしてみてはどうでしょうか。

 江戸時代の平均寿命は35才、明治大正で40才代、昭和初期から50才代に入りました。江戸時代の平均寿命の2倍以上も長生きし、その生活振りが記録されている代表的人物を二人ご紹介します。一人は徳川家康(75才)、もう一人は儒学者で「養生訓」を表した貝原益軒(84)です。二人ともいまの年齢にすると100才以上に相当するといわれています。

  家康は常に自分の健康に気を使い、日本や中国の医学を勉強して薬を調合し、自分や家来に投薬しています。食べ物は質素で生ものは食べず、旬のものを食べるようにしています。地方の大名から献上されたの珍しい食べ物でも家来に配っています。家康いわく「食事は飢えぬほどで足りる」という考え方です。運動は武術は勿論、鷹狩りを毎週、関ヶ原の合戦の時もやっていたといいます。

  一方、貝原益軒は自分の長生きした生活のやり方を死ぬ一年前に「養生訓」として書き上げました。本は八巻からなっており当時のベストセラーとなり養生ブームをつくりました。大まかにまとめると@気持ちは平静に保つ A毎日楽しみを一つ見つける B身体はよく動かす、ただし激しいことはいけない C大食いせず、腹八分目 D食べ物は淡泊にする E熱い風呂はさける F少量の酒を飲む

  21世紀の長寿者については、1900名のアンケート調査があります。これらの長寿者に共通していることを擧げます。@子供家族(3世代家族)と同居している A病気をもつ人が少ない B一日3食をとる Cいも、魚介、乳製品、豆腐、海草類、果物をよくとる D散歩または体操がほぼ毎日 E毎日定時に起床、就寝 F煙草はほとんどの人でのまない G酒は少量のむか、のまない H大小便に起立ができる I話を理解し、年月日の記憶ができている。まさに健康の証し「八快(快食、快眠、快便、快尿、快談、快声、快笑、快歩)」のできている人たちです。

 最後に自称新老人95才の日野原重明先生(聖路加国際病院理事長)が考えられた「健康心得10ヶ条」を平成の養生訓としてお話します。尚詳しい解説は文芸春秋10月号をお読み下さい。@小食、腹八分目 A植物油をとる、肌のハリを保つ B階段は一段飛びで C速歩き Dいつも笑顔 E首を回す F息を吐き切る G物事に集中する H身の回りの物は自分で購入 I体重、体温、血圧を計る

 長寿者は誰に習うことなく自然に糖尿病の生活をしているわけです。糖尿病のために決められた生活とは考えないで長生き、元気でいるための生活と考えると気が楽になると思います。元気で長生きしたい気持ちはすべての人間の願望ですから、皆さんは長生きするための生活を実践していると考え直して頂きたいです。