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「糖尿病女性外来」の開設

 2008.8.13

9月より当院内科第3診察室に「糖尿病女性外来」を開設することになりました。

担当医師は育児にも詳しい糖尿病専門医坂井恵子先生にお願いしました。

糖尿病の原因、病状経過や合併症には男女差(性差)はありませんが、女性生理からもたらされる病態の変化(血糖値の変動)があります。@思春期にはその時期特有の心理変化とか、身体活動によって食事量を増やす必要があります。年令によっては一日3000キロカロリーをとらせる必要もあります。またA月経周期により血糖値の変化がおこります。月経前には血糖値が上昇し個人差はありますが、生理中の腹痛、疲労感、気分のむらなどにより血糖値が変動します。肥満をもつ糖尿病女性はB月経不順、無月経になり易く、不妊症となる心配があります。また反対にやせ過ぎると(標準体重の85%以下)月経異常、性ホルモン異常をきたし不妊症の原因になります。

一般に糖尿病患者さんは感染症を引き起こし易く、特に女性ではC尿路感染、性器感染(カンジダ症)に悩んでいる方を多く見受けます。

次に結婚適齢期になりD結婚相手に糖尿病のあることを打ち明けるべきかどうかで迷う人がいます。このことは是非打ち明けるべきことで、話さないために悩み苦しい思いをして自殺を試みる人もいます。結婚相手が決まったら前もって医師と面談し病状を相手方に説明をしてもらうよう依頼することです。医師は経験もあり、相手方が充分に納得できるように説明することは簡単なことです。

女性外来の主たる診療はE妊娠、分娩、出産を母、胎児ともに安全に、円滑にもっていくことです。それには計画妊娠から始まり、厳しい血糖コントロール条件下におかないと正常分娩にもっていけません。糖尿病女性の病状いかんによっては妊娠中毒、流早産、母親の合併症進行、奇形児、巨大児など出産後に尾を引く問題を残すことになります。

内服剤は胎児に低血糖をおこす危険性があり、Fインスリン注射に変えねばなりません。しかし妊娠経過が長くなるとインスリン抵抗性が大きくなり妊娠後期には食事摂取量も多くなることからインスリン注射量も増やさねばなりません。このように慎重な治療管理にあった妊婦は分娩翌日からは授乳期に入ることにより血糖値管理がさらに難しくなります。摂取カロリーを増し、栄養素のバランスを考えていくには管理栄養士と充分に相談していかねばなりません。

最後は更年期に入ってからの性ホルモンバランスがくずれて、ホルモン療法を行う時の問題です。治療によっては血糖値の変動をきたすことがあり医師と相談する必要があります。

極めて一般的な女性の生理問題を取り上げましたが、さらに個人毎の細かな相談があるかもしれません。気兼ねなく坂井先生にご相談下さい。