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歩いて、歩いて、歩いた日本一周

 

2010.11.19

人間の歩行の歴史は400万年前から始まっていることはアフリカで火山流失土に足型のあることで証明されています。広い動物の世界で人間だけが歩き、手で仕事をすることによって人間の世界、人間の文化文明が発達したと言われています。 東洋医学では足裏に52箇所のツボがあり身体全体の調整をしていると考えています。 従って歩くことにより知能が発達し健康な体つくりができ、多くの病気を予防しています。

自分の健康維持のためと考えましたが、糖尿病専門医として一度患者になってみなければ真の診療ができないのではないかと昭和63年に考え一計を思い立ちました。食事はかり、万歩計、インスリン注射(当時は壜から吸引する使い捨ての注射器)とインスリン容器を用意して患者らしい療養生活を3ヶ月間試みることとしました。3ヵ月後糖尿病患者をやめて(?)も歩く習慣だけは続けていました。それが高じてさらに遠くまで歩いてみたいと思うようになりました。3034kmの長距離コース、1025kmの中距離コース、自宅と病院間往復の8kmコースを一年間の予定に組み、数年後毎に繰り返します。これらのコースはほぼ歩道が整備されているからです。歩道のないところですと対向車が来たときには路肩弱しで少し下がって待っていなければなりません。この歩くタイミングをはずされることは大変苦痛なものです。

長距離歩行をする時はそれなりの心身の準備が必要で、勤め先の往復8kmを2,3日やっておきます。心の準備としては何か解決しておかねばならない問題点、仕事の段取り、心配事などのテーマを持って歩くことにしています。これは意外とよい方法なのです。歩いていると徐々に頭が冴えてくるものです。ノーベル受賞者がよく散歩している時に解決法が見つかると言うのはこのことかもしれません。ランニング・ハイといって長距離を走っている時に、脳内にエンドルフィンといってモルヒネ様のホルモンが分泌されて気分が爽快となります。さらに景色が華やかに色づいて桃源郷に迷いこんだ感じになると言われていますが、体がすっきりして高揚感を感じることが2度ありました。長距離の時には8時間、9時間をひとりでいるために気持ちが落ち込まないように工夫する必要があります。その一つとして終着地点は札幌にすることです。その理由は二つありますが、一つは起床後準備をして8時半か9時に歩き始めると身体が慣れていないので疲れが早くきます。それでバス、JR、車で先に目的地へ着くまでにウォーミングアップができます。もう一つは札幌へ戻ってくると手稲、藻岩山の山頂が次第に見えてくるので気持ちが楽になります。

歩き始めて4年位経った頃、北海道新聞夕刊に北海道海岸線一周を歩き遂げたという記事がありました。その距離が2000kmということで、それまでに歩いた距離を積算すると約1800kmになっています。北海道一周は目前に来ていることが分かり、毎年このペースで歩くと日本一周は可能であると判断しました。札幌で生活しての日本一周ですから宿泊代、食事代、交通事故、山中の動物に出会う事故、病気になった時の心配がいらないのが助かります。従って日本一周の旅といってもほとんどお金がかかっていません。せいぜい交通費と飲料水くらいで、かかるといえば2,3年ごとに購入するウオーキングシューズです。次に日本一周の距離の問題があります。まず札幌在住して日本一周を計画すると何年かかるかです。歩き始めの頃のコース選定は距離を確実な線でとっており、実際にはもう少しあるはずです。

30km(小樽、千歳、支笏湖、当別、岩見沢)

20km(定山渓、石狩浜、札幌市一周)

10km(国営滝野すずらん公園)

      8km (病院往復)

3〜4km(通勤片道)

これで計算すると、30+20+(3〜4/日×4/週×4/月×12/)+(6×8回 /)10×6/年)=830km/年間

このペースで23年間(2009年末)通すと合計 19090kmとなります。そこで日本一周の距離数はどのくらいあるかの問題があります。これについては公式記録が見当たりません。どの道を選ぶか、歩く以外に車か、自転車か、リヤカーかなどで距離数が異なってきます。

海岸線でみた公式記録はありますが歩ける対照にはなりません。海岸線全長をみた公式記録は35126km(日本地理書院)、29751km(アメリカNASA調査)で6000km近くも異なりますが、29751kmはアメリカ、中国、オーストラリアより長くカナダ、インドネシア、フィリッピンより短くて世界第六位となります。ここではJR線に沿った公道(歩道があること)で、半島突端、海峡、小島は除外しています。基本的にJR線で一周できる公道ということになります。これまでに一周したとされる記録をみると8296km(吉村靖夫氏)、17704km(日本テレビの日本列島一筆書き)、18889km(ユーメイト社の日本一周歩数計の旅)となっています。日本地図(昭文社160万分の1)をマップメジャー2で計測するとなぜか少なく7584kmとなりました。これら数値の違いは歩く行程のとりかた、図面でみると道路の細かな曲線や昇り下りの勾配も一本線で示されるためかと考えます。「日本一周歩数計の旅」万歩計は地方図面の公道をたどっているもので実測地として信憑性の高いものと思います。世界一周は約4万kmといわれ、2009年末でほぼ半分を歩いたことになります。札幌は北緯43度ですから地球半周すると南半球の南緯43度アルゼンチン・ブエノスアイレスに当たります。

自己解釈、非公式の日本一周ですが体力からみても、さらに継続する目的もないため一区切りとしました。今は長距離をやめて、日常生活での歩きを楽しむこと(美しい歩き方)に励んでいます。