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日本循環器学会に参加して

 

循環器領域の最新の話題として大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル大動脈弁置換術をご紹介します。

全身に血液を送るポンプの役割をしている左心室と大動脈の間にある弁を大動脈弁と言いますが、この大動脈弁が硬くなり血液が通過しにくくなる病気が大動脈弁狭窄症です。進行すると胸痛や失神、心不全などの症状を呈し、数年で死に到る病気です。この病気は高齢者に多くみられ、最近は動脈硬化による重症例が増加しています。

これまでは、心臓外科手術(人工弁置換術)が効果的な治療とされていましたが、手術が必要となっても年齢や合併症のために手術を断念することが少なくありませんでした。そこで手術と同じような効果をしめす新しい治療法として開発されたのが経カテーテル大動脈弁置換術です。

この治療法は、胸を開かず心臓が動いたままの状態で、大腿動脈(足の付け根の血管)を穿刺してカテーテルを挿入するのが基本となります。動脈の蛇行や狭窄が強い症では、左の胸を小さく切開し心臓の先端(心尖部)から挿入します。まず、大動脈弁をバルーンで拡張し少し弁を広げます。この状態で人工弁をバルーンと共に大動脈弁の位置まで持ちこみ、バルーンを拡張することで人工弁を圧着し留置します。カテーテルを用いることで、胸を開く必要がなく、人工心肺装置も不要なため、従来の外科手術に比べて体への負担が少ないというメリットがあります。

日本では201310月から始まったばかりの新しい治療法ですが、今後この治療の恩恵を受ける方が増えると考えられています。(文責;石井 勝久)  

 

日本糖尿病眼学会に参加して

 

今回は先日の糖尿病眼学会の報告をします。学会ではその時そのときの最新の治療・検査・統計について報告や意見の交換がおこなわれます。

その中でも今回のトピックは、遺伝子の話でした。遺伝子と言うのはいわば身体を作る設計図のようなもので、両親から受け継いだものです。だから、顔つき・体つきあるいは身体の傾向は両親に似てきます。その遺伝子が正常じゃなければ正しい身体が出来上がりません。すなわち、病気になってしまう、あるいは病気になりやすい身体になってしまうということです。

今回の学会では糖尿病網膜症遺伝子の存在が報告されました。この遺伝子を持つ人は網膜症になりやすいということです。まだこの遺伝子を持っていたら必ず網膜症になってしまうという程強い関連ではないらしいのですが、大変な発見の一つといえるでしょう。なぜかと言うとこの遺伝子を持つ人は、網膜症になりやすいのだから血糖値により注意をしなければいけないと自分で自覚が出来るわけですし、それによって網膜症の予防につながります。またさらに研究が進むことにより、将来的にこの遺伝子を取り除く方法が見つかれば、糖尿病になっても網膜症にならない、網膜症根絶という夢のようなことも実現できるかもしれません。この遺伝子検査(解析)・治療と言うのが今後の医療の中心になっていくことでしょう。(文責;永坂 嘉章)

 

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