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糖尿病眼学会から最近話題の報告

2016.10.21

学会で仙台に行ってきました。杜の都仙台とは言いますが、仙台駅に着くと牛タンと笹かまのお出迎えがたくさんで、どちらかと言うと牛タンの都と言う感じでした。

 今回は糖尿病眼学会と合併症学会の合同学会でした。従ってたくさんの合併症、あるいは網膜症との関係について勉強することが出来ました。

 そこでまず、腎症と網膜症の関係です。

眼の血管は非常に細い血管(毛細血管)です。腎臓も同じような毛細血管が毛玉のように集まった糸球体と言うものの集まりです。従って、網膜症が出て、進行すると、腎症も始まることが多く、逆に腎症が起こると網膜症も出やすく進行も早い傾向があります。すなはち、腎症になるようなあるいは腎症が進行するような糖尿病の状態が続くと、当然網膜症にも要注意しなければなりません。また、網膜症が強く、腎症も透析に入る手前のV期〜W期迄進んでいるときは、一時的にでも早めに人工透析を導入することによって、網膜症の進行が抑えられたと言う報告もありました。

 さらに毛細血管の悪化と言うことでは足病変とも大きく関係があります。先にも述べたように網膜症の出現・進行が見られるということは、全身の毛細血管にも影響が出ていることになります。例えば足の指先の毛細血管が障害を受けると足指の潰瘍・壊死へと進行し、足指・足の切断と言う悲しい結果になってしまいますが、網膜症が増殖期に入るとその確率は高くなります。

 さらにさらに、頭・脳の血管との関係も強く言われています。脳の血管は脳を守るために非常に特殊な性質をしていますが、眼・網膜の血管も似たような特殊な性質を持っています。ここではその内容に関しては難しいので説明は省きますが、要するに脳と眼の血管は似たような特殊な形・性質を持っているということです。と言うことは網膜症が進みその性質・形が壊れてしまうと、脳の血管も同じような状態になっている可能性があると言うことです。網膜症が進行して眼底出血や無還流域(血の巡りが悪くなっている場所)があると脳の血管も血の巡りが悪くなっている可能性があると言うことです。網膜症が増殖期になると認知症が進みやすいとも言われています。

 この様に、眼と腎臓、眼と足、眼と脳は密接に関係がありますが、腎臓・足・脳の血管は直接見ることができないためその状態を知るには造影検査などの少し大変な検査が必要になります。しかしながら眼は眼底検査によって直接血管の状態を観察することが出来ます。それによって体の他の部位(腎臓・足・脳など)の血管の状態を予想することが出来るのです。だから眼の検査は網膜症のことだけではなく身体の全身状態を知る上で重要なのです。

 

眼科 永坂嘉章医師

 

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