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糖尿病の治療薬剤と医療機器の最新情報

2016.2.2

2013年から2015年にかけて新しい糖尿病治療薬が発売され治療のレパートリーが大きく拡充されましたのでお知らせします。

<血糖を測定する機器の進歩>

@CGM(持続血糖測定法):皮下の組織中のブドウ糖を5日間持続的に測定します。HbA1cが良いとつい患者さんも医者も安心していましますが、自覚できない低血糖(特に夜間の低血糖)を発見することができます。5日間測定し解析が行われた後結果がわかりますが、下記に示すSAPはリアルタイムに血糖を確認することができます。

Aフリースタイルリブレ:CGMのように皮下にセンサーを装着して使う500円玉程度の大きさの機械です。2週間にわたっていつでもセンサーにレシーバー端末をかざすと皮下ブドウ糖値を示します。日本では小児のみ保険適応となっています。

<インスリンの投与法の進歩>

@SAP:これまでのインスリンポンプは健常人のインスリン分泌を模倣するようにインスリンを皮下注入することによって1型糖尿病の血糖管理に使われてきました。SAPはインスリンポンプとリアルタイムCGMが一体化したポンプです。すなわち、今の血糖を把握した上でインスリン注入をするものです。

A吸入インスリン;わが国では未承認ですがアフレッザという吸入インスリンが米国で使えるようになりました。超速効型インスリンよりも作用時間が短いのが特徴で通常のインスリン療法に加えて急速に血糖値を下げたいときに使用するのが良さそうです。ただし喫煙者や肺に病気のある人は勧められません。

<インスリン製剤の進歩>

持効型インスリン(長時間作用するインスリン)

@ インスリングラルギン300単位/ml(製品名ランタスXR®):ランタスは2003年、わが国で初めての持効型インスリンでした。持続時間は24時間ですが患者さんによっては注射後20時間頃から効果減弱が認められ1日2回の注射が必要でした。それに対しランタスXRは24時間以上効果が持続し低血糖の頻度が少なくなっています。

A バイオシミラーインスリン:ジェネリック医薬品と似ていますが、先発医薬品と同じ有効成分を含んでいるわけではなく先発医薬品と同等の有効性や安全性が期待できる医薬品です。先発医薬品の薬価の70%が基本となるため値段が安くなります。

B インスリンデグルデク・アスパルト(製品名ライゾデク®):持効型インスリンと超速効型インスリンを7:3の割合で混合されている製剤です。1日に1回のインスリンを1日の中で一番多く食べる食事の直前に注射すると、持続的にインスリンが補充されつつ食後の血糖も抑える超速効型インスリンの効果も期待できます。  

その他には1週間に1回の基礎インスリンの補充が可能なウイークリー製剤の開発も進められています。

<週に1回投与製剤>

DPP-4阻害剤(内服薬)やGLP−1製剤(注射)は今までもありましたが、週に1回の内服や注射が発売されました。ただし風邪や急な手術の時など注意が必要です。

<新しい内服薬>

@ SGLT−2阻害薬:尿に糖を沢山排泄させて血糖を下げようとする薬です。

血糖を改善する以外にも体重減少や中性脂肪の低下など血糖の改善以外にもメリットが報告されています。更に、2015年のEASD(欧州糖尿病学会)で心臓死や全死因死亡のリスクを改善するという結果が報告されました。

欠点としては尿の量が増えるので水分補給を十分しないと膀胱炎を起こしやすくなります。また体重減少効果もあるので筋肉量が減ってします場合もあり痩せている高齢者にはむきません。

これらの新薬が発売されて使用できるようになりましたが、治療がより複雑化・煩雑化してきたとも言えます。

新薬の効果を最大限に発揮できるかどうかは、糖尿病の状態をしっかり検査し、医療者が患者さんの生活状況や問題点を理解できるかにかかっていると思います。(文責:坂 井)

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