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脂質異常症について

2016.3.9

脂質は三大栄養素の一つであり、体の働きを正常に保つために必要なものです。そのため、脂肪は血液中を通って体中の各臓器に運ばれていきます。血液中の脂肪にはコレステロール、中性脂肪(トリグリセリド)、リン脂質などがあります。主には肝臓で作られたり、食事からとり込まれたりして、血液中に一定量が保たれるように調節されています。コレステロールは、人の細胞膜の成分として、また消化吸収に必要な胆汁酸や各種ホルモンの原料としても利用されます。中性脂肪は貯蔵用のエネルギーとして重要です。

しかし、油物をとりすぎたり、運動不足が続くと、血液中の脂肪が多くなりそのバランスが悪くなります。この状態は「脂質異常症」と呼ばれ、脂肪のなかでも特に悪玉(LDL)コレステロールや中性脂肪が多すぎる、あるいは善玉(HDL)コレステロールが少なすぎる、などの状態を示します。

LDLコレステロールは、血液中でコレステロールを肝臓から末梢組織に運んでいますが、多すぎると血管の壁に入り込み、動脈硬化を引き起こす一番の担い手になるため、悪玉コレステロールと呼ばれています。HDLコレステロールは、血管壁から余ったコレステロールを肝臓へ戻し、動脈硬化を進行させないように働くので、善玉コレステロールと呼ばれています。中性脂肪は、多くなりすぎると肥満や脂肪肝をきたし、動脈硬化を引き起こすもとになります。

自覚症状がないままに進行してしまう脂質異常症ですが、体中の血管では静かに動脈硬化が進み、全身の動脈が硬くなり、次第に血管の内腔が狭くなって血液が通りにくくなります。心臓の血管が詰まれば心筋梗塞、脳の血管が詰まれば脳梗塞になり、生命を脅かします。脂質異常症を予防、治療することはこれらの病気の発症を防ぐことに他ならないのです。

脂質異常症の治療目標は、動脈硬化の危険因子に応じて一人ひとり異なります。すでに心筋梗塞や狭心症を起こしてしまって治療中の方や、糖尿病や慢性腎臓病など動脈硬化を進めやすい状態にある方は、より低いLDLコレステロール値を目指さなければなりません。特に糖尿病では脂質異常症を合併すると、それぞれ単独でわずらっている患者さんよりも心筋梗塞や狭心症に進展する危険性が高くなることがわかっています。日本動脈硬化学会のガイドラインにはこれらのリスクに応じた治療目標値が決められています。ただし冠動脈疾患の既往のない75歳以上の後期高齢者では、高LDL血症に対する脂質低下治療による冠動脈疾患の一次予防効果の意義は現時点では明らかではなく、主治医の判断で個々の患者さんに対応することとなっています。

脂質異常症の多くは、食生活や運動習慣などの生活習慣の乱れによって引き起こされるものです。夜型の生活、運動不足、喫煙、コレステロールや糖質などを多く含む食品、アルコールの摂りすぎには注意が必要です。

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