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糖尿病と認知症

2016.5.13

糖尿病患者は糖尿病でない人と比べて認知症を起こしやすく、約1.5−1.7倍といわれています。また、日本の外来通院中の75歳以上の糖尿病患者の約4人に1人が認知症疑いがあるとの報告もみられます。認知症の6割を占めるアルツハイマー型認知症の発症仮説としてアミロイドβ蛋白が脳に蓄積し脳を障害すると考えられています。高血圧や脂質異常症、肥満、糖尿病、喫煙といった生活習慣病があると、アミロイドβ蛋白がより蓄積しやすくなりその結果、認知機能を悪化させるのではないかと言われています。

糖尿病が認知症を発症させる原因は非常に複雑です。Biesselsらの報告によると糖尿病が脳の大血管に動脈硬化を起こしたり、細小血管が詰まったりして認知症を発症させる。また高血糖そのもの、もしくはインスリン抵抗性(高脂肪食や肥満が原因でインスリンが分泌されているのに血糖が下がりにくい状態)が酸化ストレスや慢性炎症を促進し、これが脳へ影響するということも原因と考えられています。

では糖尿病患者さんが認知症にならないように血糖コントロールをするうえで大切なことは

1高血糖:HbA1c7%以上の高血糖は認知症の発症の危険因子という報告が多いですが、実に様々な報告があります。また高血糖による認知機能の低下(例えば注意集中力や学習記憶能力)は血糖が改善されることにより一部改善されます。

2低血糖:重症低血糖(他人の介助を必要とする低血糖)が少なくとも1回あると認知症のリスクは1.24倍高くなり2回以上低血糖があるとそのリスクは1.8倍となっています。高齢になると低血糖症状の自律神経症状(動悸/発汗/手の震え)が出にくくなるため、糖欠乏症状(ふらふら感/めまい/脱力感)を手がかりにして低血糖を疑がってみてください。

3血糖変動:持続血糖モニター(CGM)で約4日間の血糖を持続的にモニターすることが可能となり当院でも入院と外来の患者さんに検査を行っています。そのCGMで最高血糖値と最低血糖値の差が大きいほど認知機能低下を認めたとの報告もあり、血糖変動幅を少なくコントロールすることが大切です。

以上のことをふまえると、HbA1cは7%以下で低血糖なく血糖をコントロールし、その他の生活習慣病(高血圧/脂質異常症/肥満/喫煙)を改善させることが重要となります。

5月19日から21日まで日本糖尿病学会年次総会が開催されます。高齢者の血糖コントロールはどこまで厳格にするべきか、また認知症を合併している患者さんの治療目標の下限を設けるか否か議論されると思います。

ここで最近認知症外来に受診された患者さんの様子についてお話しします。

<症例>

80歳 男性  

外来診察時はなにも変わった様子はありません。(外来診察ではわかりませんでした)

血糖コントロールが悪化したので入院したところ、検査の説明が理解できず何度も看護師に同じ質問をされました。内服も飲み忘れが多くみられました。

奥様に状況を話し、脳外科の物忘れ外来受診し認知症と診断され内服治療しています。

外来主治医も家族も認知症に気づきませんでしたが、入院生活の様子から医療者が認知症に気づく事もあります。

 

最後に外来で認知症外来受診について相談を受けることがあります。年相応と認知症の物忘れの違いを示します。参考にしてください。

<年相応の物忘れ>         <認知症の物忘れ>

体験の一部を忘れる         体験自体を忘れる

(例;夕食の内容を忘れる)     (例;食事した事を忘れる)

本人が自覚している         本人が自覚に乏しい

「最近物忘れがひどくて・・」    「物忘れなんかありません」

人の名前を思い出せない       誰かが盗った

物を置き忘れる           取り繕う/作話をする

進行はしないか遅い         進行が速い

 

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