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膵臓移植でインスリン注射はいつやめられるか

2017.4.21

  このタイトルはインスリンが発見された1921年頃からのテーマで世界中の研究者やインスリン治療患者の悲願の目標でした。ところが京都大学山中伸弥先生がiPS細胞でノーベル賞をとった頃からこのテーマの研究が盛んになっています。最近の新聞報道(特に朝日新聞)、学会報告、医療情報誌で盛んに報道され、厚労省もこの研究に協力的です。医療が新しい時代に入った感じがあります。

膵臓移植は保険適用になっていますが膵臓提供者(ドナー)が極めて少なく拒絶反応が高く、高齢者や心疾患の人の膵臓提供もあり、時には死亡の危険性もあるようです。患者は腎不全があり膵臓と腎臓の同時移植が多いです。免疫抑制剤の服用は継続していきます。201512月末までに246例の膵臓移植があり移植無効例42名、死亡例14名拒絶反応とかで大半がインスリン再治療になっています、

次に手術負担と拒絶反応の最も少ない膵島移植についてお話します。膵島移植の臨床応用は最も好ましいやり方です。膵臓提供者(レシピエント)の膵臓組織を化学薬品でバラバラにほぐし、膵島のみを取り出します。

膵島数個をカプセル化して拒絶反応を防ぎます。

次に登場するのはiPS細胞を用いるやり方です。iPS細胞は人工多能性細胞といわれるように細胞の将来が決まっていない初期の幹細胞です。従ってこの未熟幹細胞の誘導によって身体のどの細胞にもなれるものです。

ではこの万能iPS細胞をどこから持ってくるかのやり方が検討されています。一番好ましいのは患者本人の組織から用いますが他人の組織でも良いのです。それを増殖して膵島細胞に変えて体内に点滴注射で注入しますから手術もいりません(自家移植)。ただ膵島細胞が血糖値に応じたインスリン分泌をしてくれるかどうかです。最近は豚の膵島細胞を用いる研究が盛んに行われています。無菌豚で幼若な豚の膵臓を用いるトピックスとして新聞に載りました。大塚製薬はニュージーランドに幼若豚を育て大量の膵島細胞を作る工場を作りました。恐らく今後はiPS細胞が診療に使われるまでの間は豚膵島細胞の移植(異種移植)が盛んになると思われます。豚の膵臓は人とほぼ同じインスリンを作っており、4,50年前までのインスリン治療は豚インスリンで治療していました。

昨年5月に厚労省は異種移植を解禁し、国立国際医療研究センターでは診療に使い始めています。

なおiPS細胞については4月13日(木)午後1000放映予定の“カンブリア宮殿”で山中教授がお話しされることになっています。

 

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