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糖尿病学会報告  

2017.6.23

5月18日〜20日名古屋にて日本糖尿病学会が開催され、出席してきましたので最近の糖尿病治療について報告します。

全体としては、

1、高齢者糖尿病に関することとして、骨粗鬆症の予防や治療及び 認知症の予防と認知症を有する糖尿病患者をどう支援していくか について多くの施設での取り組みが発表されました。

2、最新治療としては糖尿病の根治に向けた再生医療の状況や最新 治療薬(インクレチン関連薬、SGLT2阻害薬、週に1回の注射薬や内服薬)の治療効果などの報告が数多く見られました。

3、糖尿病患者さんは脂肪肝を伴うことが多く、今年は「肝臓と糖尿病・代謝研究会」も同時開催され糖尿病とNAFLD(非アルコール性脂肪性肝炎)の関連の報告も多く見られました。

海外からの演題やコメディカル(看護師、薬剤師、栄養士、検査技師、運動療法士)の演題も合わせて2786演題あり、年々大きな学会となっています。(会場は三カ所の大会場をシャトルバスに乗りながら移動するので少し大変です)

その中で、私が興味深かったのはグルカゴンについてです。

グルカゴンとはインスリンを分泌する膵臓(ランゲルハンス島内の)β細胞のすぐ近くにあるα細胞から分泌されるホルモンです。血糖をあげるホルモンとして知られており、低血糖になるとグルカゴンが分泌され血糖を上昇させます。高血糖になるとインスリンが作用し血糖を下げます。また、インスリンはα細胞に作用してグルカゴン分泌を抑えます。2型糖尿病においては膵β細胞量の減少がインスリン分泌量の低下を招き、近接するα細胞の抑制効果が低下するために結果としてグルカゴン分泌は増加し高血糖につながります。

糖尿病の高血糖は

β細胞の働きの低下→インスリン分泌低下=高血糖

インスリン分泌低下→α細胞からのグルカゴン抑制できない=高血糖

今まで糖尿病はインスリン分泌低下とインスリン抵抗性(インスリンの効きが悪い)が原因でありこれらを治療することに主眼が置かれてきましたが、最近このグルカゴンにも注目した治療アプローチがより合理的と考えられるようになってきました。グルカゴンを抑える治療薬としては、すでにメトホルミンやインクレチン薬があります。(インクレチン薬については以前に数回この白板に登場しています。)

グルカゴン作用を低下させる薬については、書ききれませんのでまた少しずつ紹介していきます。

 

〜昨年の傾向をふまえて一言〜

最近暑くなってきて、アイスやジュースで血糖が上がっている人が増えています。昨年も気温・湿度が上がると同様の傾向がありましたので、早めに砂糖入り飲料水とアイスの砂糖量を示します。

対策も示しますので参考にしてください。

1ポカリスエット(500ml):角砂糖9個

2コカコーラ(500ml):角砂糖15個

3カルピスウオーター(500ml):角砂糖18個

4アイス(ガリガリ君ソーダー味):角砂糖5個

<対策として>

1風呂上がりに飲む・食べるという“習慣”を作らない。

2寝る前に食べない

3氷水1杯飲んで飲むか・食べるか決める。

4アイスの代わりとして

・果物1単位分(ぶどうやバナナ)を凍らせる

    1粒アイスを少量たべる。(「アイスの実」や「Pino」など)

 

坂井恵子医師

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