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学会参加報告

2018.2.2

糖尿病眼学会が東京でおこなわれました。ここでは患者さんにわかりやすいことを抜粋してお話ししようと思います。

 まず、日本の中途失明者(生まれつき目が不自由なのではなく、不幸にして途中で目が不自由になってしまった方)の割合は、以前は1位:糖尿病網膜症、2位:緑内障でしたが、ここ最近(4〜5年)では1位:緑内障、2位:糖尿病網膜症になっています。これにはいろいろな理由があります。第一に糖尿病としての治療・全身の管理が良くなりました。また内科の先生が眼科受診を積極的に勧めてくれるようになり、網膜症が重症になる前に手を打てるようになってきたということです。次に、検査機械が進歩することにより早くから網膜症の状態を知ることができるようになり手遅れになる前に治療を始めることができます。特に当院でも使われているOCTという断層撮影機械は特筆です。断層撮影というとCT・MRI・超音波(エコー)を思い浮かべる人が多いと思いますが、CTのように放射線を使わないので害はなくMRIのように撮影に長時間かからず3〜4秒で終わります。またエコー検査のように撮影技術の差はほとんど出ないので、素晴らしい検査機械といえます。また、網膜症の治療法(手術・レーザー・注射)が進んだことが言えます。私が大学病院に勤務中の時と比べ手術の機械が格段に進歩しました。更に手術中の眼の中に特殊な薬を入れることによって、病気の部分と正常な部分が色分けされて見やすくなったり、眼の中を照らすライトも一部分だけではなく眼の中全体を照らすものになり非常に手術しやすくなりました。もちろん手術も、どこをどのようにしたらうまくいくか・再発が少ないか等知識・技術が進歩しています。

 では、治療の話をもう少し詳しくしましょう。なぜ網膜症になってしまうかというと、糖尿病により細い血管(毛細血管)が傷んで詰まってしまいます。血管が詰まったところは血の巡りが悪くなりそこから悪い液が出ます。それによって物を見る中心(黄斑部)が腫れてきたり、破れ易い悪い血管(新生血管)が出てきます。従って治療はその腫れた黄斑部に対して眼に注射をして腫れを引かせます。それだけだと血の巡りが悪いところから悪い液が止まらないので、そこにレーザー光線を当てて止めてしまいます。以前は治療の中心はレーザーだったのですが、眼に対しての負担が大きいので、注射が多くなってきています。ただ治療法の変化に伴い医療費の負担も大きくなっています。注射とレーザーを組み合わせると両目で70-80万円くらい自己負担でかかってしまうのが現状です。

最後にHbA1cと網膜症の関係の話をもう少ししましょう。今回の学会ではわかりやすいデータがありました。HbA1cが高いとき(9%以上)その影響はすぐに出てくるわけではありません。メタボリックメモリーと言って、後々影響が出てくることは良くあります。ではどのくらいその影響が続くのかと言うことですが、10年は続くと言っていました。 また、血糖値が高いとどのくらい眼に影響するかというデータも出ていました。HbA1cが7%以下の人と比べると、7-8%の人は2倍、8-10%の人は3.5倍、10%以上の人は7倍の可能性で網膜症が出やすいというデータになっていました。

血糖値が高くなって網膜症が出てしまうと、視力だけではなくお金も失ってしまうという最悪の結果が待っているのです。ともかく血糖値を上げないようにして、眼の合併症・網膜症にならないようにする。検査をきちんと受けて悪いときは早め早めに対処するということが重要だということです。

眼科医師 永坂嘉章