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心臓に大きな負担をもたらす睡眠時無呼吸症候群とは

2019.5.21

  普段忙しい生活を送る中で、心や体をリフレッシュするために最も大切にしたいことが睡眠です。もし十分な睡眠時間をとっているのに昼間に眠気があったり、起床時に倦怠感や頭痛があるなら、睡眠時無呼吸症候群(SASSleep Apnea Syndrome)の症状かもしれません。

SASは睡眠中に何度も呼吸が止まった状態(無呼吸)が繰り返される病気です。多くの場合、空気の通り道である気道が閉塞してしまうことにより起こります(閉塞性睡眠時無呼吸症候群:OSAS)。肥満の人、首が太くて短い人、顎が小さい人などに多く、元々気道が狭い構造になっているところに、睡眠中には咽頭の筋肉や舌が緩みさらに気道が狭くなって起こってきます。

OSASは高血圧、糖尿病などの生活習慣病と同様に肥満が危険因子と言われ、この両者は密接に関連しています。2型糖尿病患者の約2030%に中等度以上のOSASの合併が見られるとの報告があります。OSASが合併することで、より動脈硬化が進みストレスも加わることで不整脈や心不全などの心疾患を引き起こします。

OSASでの心疾患の発症は、無呼吸が繰り返し起こることによる酸素濃度の低下や睡眠が途切れ自律神経が乱れることが誘因となります。低酸素状態が続くと心臓は酸素を取り入れようとして急激に心拍数が増加します。その結果、血圧も上がります。眠っているのに激しい運動をしたような状態となり、当然心臓に負担がかかります。また、本来睡眠中には休養や回復をうながす副交感神経が優位となりますが、睡眠が分断されることで逆に交感神経が刺激され、心房細動や心室頻拍などの不整脈が生じやすくなります。これらの積み重ねが心臓の機能を低下させ、やがて心不全を引き起こします。

外来でのスクリーニング検査として「簡易型睡眠モニター」、精密検査、確定診断には1泊入院で「終夜睡眠ポリグラフ:PSG」を行います。

SASは生活習慣の改善(肥満のある場合は減量、禁煙、就寝前の飲酒をさけ睡眠薬を控える、横向きに寝る)でよくなることもありますが、効果が得られない場合は夜間のマウスピースや専用マスク(持続陽圧呼吸療法:CPAP治療)を装着します。睡眠中に装着することで上気道を広く保ち、いびきや無呼吸の発症を防ぐことができます。もちろん、生活習慣を改善することで予防も可能です。

いびきは無呼吸の前兆ですが、この病気はいびき以外には自覚症状が出にくく、昼間の眠気を自覚する方は半数程度で、なかなか自分では発見しにくい病気です。周りの人から寝ている時のいびきや無呼吸を指摘されている方は、ぜひSASの精査を受けて下さい。長い人生のうち、約3分の1の時間は寝ているのです。SASを発見し適切な治療を受けることが心疾患予防の重要なステップとなります。

医師 石井勝久

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