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心不全や脳梗塞の引き金になる不整脈

心房細動とは

2020.2.14

歳をとると動悸(脈が速くなる、不規則になる)や息切れ、めまいなど自覚することが多くなります。その原因は様々ですが、動悸程度であれば、安静にしていると感じなくなることもあり放置されてしまうことも多いようです。しかし、意外と重篤な合併症をもたらしかねない病気が隠れていることがあります。その代表例が「心房細動」です。

心臓は全身へ血液を送り出すポンフであり通常は規則的に働いています。心房細動は心臓の中でも血液を貯める場所である心房が細かくさざ波のように動き続ける不整脈です。心臓自体はきちんと働いていますが、ポンプの収縮は不規則となります。脈拍数は人によって大きく異なり、全くの無症状から、動悸や息切れ、ふらつきなど症状は様々です。健康診断でたまたま見つかることも多い不整脈です。

心房細動は発作的に生じるもの(発作性心房細動)を経て、数年の経過で慢性心房細動に移行します。50歳を境に起こりやすくなり、加齢とともに増加し、70歳代の5%、80歳代の10%程度の割合でみられます。主な原因は加齢、心臓病(狭心症、心筋梗塞、心臓弁膜症)、高血圧、糖尿病、甲状腺機能亢進症などが挙げられます。

心房細動が直接生命に係わることは少ないですが、心不全や脳梗塞を起こす原因となり、その結果として間接的に生命に悪影響を及ぼすため放置はできません。心房細動では心臓が細かく不規則に動くことで血液をしっかり送り出せなくなり、脈拍が速い状態が長く続くと心不全を起こします。また、心房の中の血液がよどみ、血液の塊(血栓)ができやすくなり、血栓が脳の血管に詰まると脳梗塞を起こします。心房細動があると健常人に比べ脳梗塞が5倍多いとされ、血栓は脳の血管の根元で詰まることが多いため、半身まひなど重症になりやすいとされています。

しかし、すべての心房細動で心不全や脳梗塞を起こしやすくなるわけではありません。脳梗塞を起こしやすくする危険因子には、@心不全がある A高血圧を持っている B糖尿病を持っている C75歳以上 D過去に脳梗塞や一過性脳虚血発作を起こしたことがある が挙げられています。この危険因子は点数化されており、@〜Cは各1点Dは2点として足し算して計算します。一般には2点以上の心房細動患者さんは年間45%の脳梗塞が起こる(100人中45人発症)と言われ予防のため抗凝固治療が勧められています。

最近は新しい抗凝固薬が広く使われ、従来使用されていたワーファリンに比べて、すぐに効果を発揮する、食事制限が不要(納豆を食べられる)、副作用の出血が少ない などの利点があります。このために最近では1点の患者さんから(糖尿病があるだけでも1点となります)使用した方がよいとされています。

糖尿病患者さんはただでさえ脳梗塞の合併は多く、一度起こすと予後が悪いと言われます。定期的に心電図検査を受け、心房細動がある方はしっかりと抗凝固療法を行い脳梗塞を予防することをお勧めします。

医師 石井勝久

 

 

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