糖尿病の人が感染症にかかりやすく
悪化しやすいのはなせですか?
2020.5.14
新型コロナ感染症において糖尿病の患者さんは重症化する可能性があると報道され、
心配している方も多いと思います。
そこで今回は糖尿病と感染症の話、また家での過ごし方についてお話します。
糖尿病の人はいろいろな感染症(風邪をはじめ、気管支炎や肺炎、膀胱炎、皮膚炎、歯周病)にかかりやすいことが知られています。特に血糖コントロールが不良な場合は感染症にかかりやすく、重症化しやすいといわれています。また、感染症にかかると血糖値が普段以上に上昇するので血糖コントロールが悪化し、糖尿病そのものに影響が出ます。
糖尿病の人が感染症にかかりやすく、悪化しやすいのはなぜでしょうか。
いくつかの原因があります
1 感染防御機能の低下
人の体は体内に侵入しようとするウイルスや細菌と常に戦っています。
もう少し詳しく話すと、
私たちの血液中には白血球という血液細胞があり、白血球(そのうちの好中球や単球)は体に侵入してくる異物(細菌や・真菌)を取り込んで消化する働きがあります(=貪食能といいます)お城を守る兵隊と同じです。この兵隊は普段血液中をフラフラと漂っていますが、体内で異物を発見すると敵を捕まえて食べしていまい、排除します。
空腹時血糖が200mg/dlを超える場合兵隊である好中球や単球の殺菌・貪食能が低下します。
従って、糖尿病患者さんは呼吸器感染症、尿路感染症にかかりやすくなります。
2 血流が悪くなる
高血糖では細い血管の血流が悪くなります。このような状態では先程の異物を排除する兵隊や栄養や酸素、また治療薬が十分に行きわたらず感染しやすくなり、また感染で受けたダメージの回復にも時間がかかります。
3 神経障害
糖尿病の合併症である神経障害の症状として痛みの感覚が鈍くなる(感覚鈍麻)場合があります。そのため症状が現れにくく感染症に気付くのが遅れるため病気が進行してしまうのです。
4 更に血糖が上昇する。
感染症が起こると血糖値は普段よりも高くなります。このことが糖尿病の
状態をより悪くしてしまい、更に感染症を進行させてしまうという悪循環が生まれます。
感染症予防の基本は、血糖コントロールを良好に保ち、できるだけ健康的な生活を維持し、感染症に対する抵抗力をつけておくことです。
そのためには
・普段以上に食事の『バランス』に気を配ること:カロリーだけを気にして栄養が偏った食事を続けていると抵抗力が弱くなってしまいます。
東京都健康寿命センターにおける、糖尿病患者さんの健康長寿のための食事合言葉を引用しますと、
「さあ!にぎやかにいただく」
「さかな、あぶら、にく、ぎゅうにゅう、やさい、かいそう」に「いも、たまご、だいず、くだもの」・・・多くの食材を食べることが重要です。
・近所のウォーキングやジョギング
陽に当たって体を動かすことは運動によって血流がよくなり、細胞の修復機能が高まります。(コロナ感染は長期戦になりそうです。3つの密を避けて体を動かしストレスの発散をしましょう)
・手洗い・咳エチケットはもちろんですが、これを機会に禁煙を。
今年4月1日から飲食店含めて室内全面禁煙となりました。
健康日本21(第2次)において、毎年13万人の人が、喫煙が原因と思われる病気で亡くなっています。また受動喫煙(副流煙や喫煙者が口から吐き出す呼出煙を非喫煙者が吸う事)や三次喫煙(呼気や衣類、頭髪の表面についているタールの微粒子を非喫煙者が吸う事)も体への影響も危惧されています。
家の換気扇の下での喫煙であっても煙の一部は室内に拡散します。
家族で過ごす時間が増える今、健康を考え禁煙にチャレンジしてみてはどうですか。
医師 坂井恵子
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