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糖尿病診療における最近の考え方

2021.10.20

この主題を取り上げるにはそれなりの理由があり、皆さんにも知って頂きたいことが沢山あります。新しい考え方が持ち上がるには、世の中の急速な社会事情の変化があり、それが糖尿病の生活や考え方にも変化を及ぼしているものと思います。
その第一の話題は、国民の3割は高齢者(65才以上)として生活しているという事実です。糖尿病患者の平均寿命は一般人の寿命に近くなっています。患者さんの平均寿命が80才になるのは時間の問題です。日本老年医学会では65〜74歳を準高齢者、75〜89歳を高齢者、90歳以上を超高齢者とする提言が出されています。
第2の話題は糖尿病の治療の対応や薬剤の種類が多くなり内容が充実してきました。
最近の糖尿病薬剤は血糖値改善させるために種々の特徴をもっていることと、併せてその他の効用を持たせています。例えば循環器の病態を改善するとか、肥満を改善するなど血糖値降下以外の別の効用も併せ持っているものです。
第3の話題は、日本人は健康志向になって元気で長生きしたいという願望が強くなり食べ物とか運動を意識するようになりました。当院に通院しているあるホテルのコック長は宿泊旅行者の毎朝のバイキングを作っていますが、旅行者の食べ方が少なくなり残り物の始末に苦労すると嘆いていました。バイキング料理は下火になってきたのでしょう。このように時代の変化が食べ物に対する考え方に変化をもたらしたのでしょう。
今回の糖尿病診療の話題として、新しい医学書「高齢者糖尿病治療ガイド2021年」が発売されました。今の日本では人口の30%が高齢者といわれています。当院の通院患者の60から70%が65歳以上の年齢です。そこでこの治療ガイドブックの中から関心持たれる記事をお話しします。

1. 高齢者糖尿病(65歳以上)の目標血糖コントロール(HbA1c)は次のようになっています。

65歳〜75歳未満

75歳以上

糖尿病(全年齢)

認知症なし

軽度認知症あり

認知症あり

HbA1c 7.5%未満

8.0%

8.5%




 

2. 災害時の糖尿病の対応
  断水、トイレ事情、電気不通などを考えておかねばなりません。加えって過度の炭水化物摂取による高血糖対処が必要になります。血糖値測定の用意、糖尿病薬、インスリン及び器具、
  アルコール綿の用意、インスリン注射の時間ずれに注意。下肢を使うことが多くなり注射部位としては不適。
3. 高齢者糖尿病の特別な注意
  高齢者の特徴として精神面の不安定、認知機能の低下が徐々に始まります。内服剤服用やインスリン注射の打ち忘れ。その他に水分補給、十分の蛋白質補給、筋力トレイニング(手指輪つかテスト)サルコぺニア(筋肉量と筋肉質の低下――筋肉が痩せる、筋力が落ちる)

高齢者糖尿病を援助する制度があり、次の通りです。
地域包括ケアシステム、地域包括支援センター、認知症疾患医療センター、栄養ケアーステイション(日本栄養士会)・・・・・(これらについては確認とってはおりません。)


佐々木 嵩 医師

 

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