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循環器病を防ぐために

〜高血圧について〜 

2021.2.1

高血圧は加齢とともに増加するありふれた病気です。50歳以上の男性と60歳以上の女性では半数以上にみられます。血圧は、心臓から送り出された血液が血管(動脈)の中を流れるときに壁にかかる圧力のことをいいます。水圧が高いと言うと、水道ホースに入った水が勢いよくホースの中を流れている状態をイメージできると思います。血圧が高いのも同じ状態で、血管の中を血液が勢いよく流れているのが高血圧です。血管はかなり丈夫にできているので、血液が勢いよく流れてもそう簡単には破れたりしません。ところが、血圧が高い状態が長く続くと、やがて血管の壁が傷つき、血管にコレステロールなどが付着し、弾性を失い、血液の通り道が狭くなります。これが動脈硬化と言われ、狭心症、心筋梗塞、脳卒中などの重大な病気を引き起こします。血圧を下げて動脈硬化を防ぎ、心臓病や脳卒中を予防することが高血圧治療の目的となります。

血圧の治療目標値は、基本は140/90mmHg未満とされており、年齢や他の心・腎・脳疾患の合併などで多少異なります。糖尿病患者さんは動脈硬化が進行しやすいために厳格な管理が求められ、130/80mmHg未満が目標値となります。最近では家庭血圧を測定している方も多いと思います。家庭血圧は原則2回測定し、その平均値を血圧値として用います。朝食前(起床後1時間以内)と就寝前の2回の測定が推奨されています。血圧の変化に早めに気が付くように、継続して測定することが大切です。

では、実際にどのようにして血圧を下げたらよいのでしょうか。高血圧治療としてまずお勧めすることは食事での塩分量を減らすことです。体に塩分が入ると血圧が上昇することが知られています。推奨の減塩目標は塩分6g/日未満です。他に規則正しい食生活や適度な運動、適正体重の維持などが血圧の安定にはよいとされています。しかし、生活習慣の改善だけで目標血圧に到達する方は少なくやはり薬物治療が必要となります。血圧の薬はかなり進歩し、11回の服用で効果が24時間持続するものがほとんどです。さらに血圧を下げる以外に腎臓を保護する効果や心不全を予防する効果などが見られます。人それぞれの病状に合った薬剤の調節が必要です。

 

最後に日常生活での注意点を説明します。

@季節による変動:冬の寒い時期は、夏に比べて血圧が高くなりがちです。暖かい室内から寒い屋外へ出ると、血管が収縮するため血圧が急にあがります。手足を含め、体を冷やさないようにしましょう。夏の暑い時期は、汗を大量にかくことで脱水となり血圧が下がることがあります。水分補給を忘れずに行いましょう。

A入浴:浴室や脱衣所が寒い、お湯が熱いと血圧が急に上がります。浴槽から出るときには血圧が下がります。急に立ち上がらず、ゆっくりとした動作を心がけましょう。

Bトイレ:排便時にいきむと血圧が上がります。トイレが寒い、便座が冷たいと血圧が上がります。

C睡眠:睡眠不足は血圧を上げます。質のよい睡眠を心がけましょう。

糖尿病患者さんは約半数が高血圧を持っています。合併症の予防のためには、血糖値だけではなく、血圧管理にも目を向けることが重要です。血圧に不安がある方は、家庭血圧を記録し主治医に診てもらうことをお勧めします。

  医師 石井 勝久

 

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