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痛風、高尿酸血症と糖尿病

2022.7.1  

石井勝久 医師

  糖尿病は血液中のブドウ糖濃度「血糖値」が高い状態が続く病気ですが、痛風・高尿酸血症は血液中の尿酸という物質の濃度「尿酸値」が高い状態が続くのが特徴です。

 尿酸は体の正常な営みによってできる老廃物のひとつで、食事中のプリン体からも合成されます。体内で作られる尿酸の量が多すぎたり、体外へ排泄される量が少なくなると、体内に尿酸が蓄積し「高尿酸血症」が起こります。血液中の尿酸値が7.0mg/dlを超えると、痛風の予備軍である高尿酸血症と診断されます。

体内で増えすぎた尿酸はやがて関節に結晶として蓄積し炎症を起こすのが「痛風」です。ある日突然、足の指に激痛が走り歩けなくなる。痛風とは風が当たっても痛むというくらい激しい痛みに襲われる病気です。約半数の人が足の親指の付け根に痛みを起こしますが、足の関節や足の甲、かかと、アキレス腱の周囲、膝関節など下肢に集中するのが特徴です。患部は赤く腫れて数日間激痛が続き、少しずつ和らいで12週間で改善します。主に30歳代以降にみられ、圧倒的に男性に多く、大酒家や肉類を多く摂取する人に好発します。

また、高尿酸血症が長く続くと、腎臓に尿管結石ができてしまう恐れもあります。腎機能の低下から腎不全を招く恐れもあるため、放置していると危険な病気です。

尿酸値を上げる主な要因として、体重増加、アルコールの過剰摂取、激しい運動、ストレスなどが挙げられます。痛風、高尿酸血症の治療は生活習慣の改善が基本です。ポイントとして、@食べ過ぎに注意(肥満の解消)。プリン体(動物の内臓、肉や魚などに多く含まれています)の摂り過ぎに注意。野菜、海藻、果物などは、尿を中性に近づけて、尿酸が尿に溶けやすくなるので積極的にとる。A十分に水分をとり、尿中に溶ける尿酸の量を増やす。適度な運動とストレスの解消を。Bアルコールの摂取はほどほどに。ビールにかぎらず、どんなアルコールも尿酸値を上げる作用があります。一般に酒の肴にはプリン体を多く含むものが多いので気をつけましょう。二日酔いの脱水状態は痛風発作の天敵です。

 薬物治療は、痛風発作の治療と尿酸値を下げる治療(尿酸の産生を抑えるものと尿酸の排泄を促進するものの2種類があります)を行います。発作時の痛みがなくなると治ったと勘違いしてしまう方が多いのも問題です。発作が治まっても元凶の高尿酸血症が改善されたわけではありません。また、尿酸値をコントロールする薬は服用をやめると尿酸値がすぐに戻ってしまうため、根気よく治療を継続することが大切です。

糖尿病も高尿酸血症も病気を発症する原因は生活習慣の乱れにあり、実際に糖尿病の人は尿酸値も高い傾向にあります。血糖値と同様に、太り気味で尿酸値が高い人は減量により尿酸値も低下してきます。

 痛風の患者さんには、肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病の合併が多いことがわかっています。これらを複数合併すると動脈硬化による心臓病や脳卒中を飛躍的に起こしやすくなります。尿酸高値を健康診断などで指摘される方も多いかと思います。ぜひ放置せずに適切な指導のもとに管理を行ってください。

 

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