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糖尿病の人は癌になり易い

 

2012.11.12

「近いうちに癌検診を受けておいて下さい」と患者さんが受診した際には、年数回でお話しています。 癌は糖尿病特有の合併症ではありませんが、一般の人と比べ2から3倍癌になる比率が高いと日本、米国の疫学調査でいわれています。

しかし、まだ両者の因果関係は明快に示されていません。癌発病は一つの老化現象、生活習慣病といわれ肥満、食事、運動不足、喫煙、飲酒、遺伝型で糖尿病と同一の誘発因子とされています。死亡原因の第一位は癌となっています。糖尿病患者に癌が多い理由、原因は全く分かっていません。糖尿病患者の

身体の特徴は一般の人と比べ高血糖になること、体質的にインスリン抵抗性が大きいことです。この二つの身体特徴がどのように臓器細胞を癌化させるのか明らかにされていません。ただ、その発病の仕方に糖尿病が先で後に癌が発病するのか、癌が先でその後で糖尿病が発病することもあるでしょう。

正常人と比べ糖尿病患者に発癌しやすい臓器は疫学調査で明らかにされています。ホルモン特に性ホルモンに関連する臓器は癌になり易いようです。しかしどういう訳か前立腺癌については日本でも米国の調査でも正常者と比べ発癌が低いとされています。2003年の国立がん研究センターが糖尿病患者10万人の癌発病を調べています。正常人を1.0として比べた倍率で述べています。

肝癌2.5倍、 子宮体癌2.1、 膵臓癌1.82、 結腸直腸癌1.3、 膀胱癌1.24、 乳癌1.2、 ですが、、前立腺癌は0.84倍で低くなっています。

糖尿病を予防することが癌予防にもなります。癌を予防するための生活環境をもう一度見直して見ませんか。肥満を防ぐ、適度の運動、禁煙、適度の飲酒、塩分制限。C型またはB型肝炎患者は定期癌検診が必要です。最近の海外の論文にはコーヒーを良く飲むことが奨励されています。また親族に癌が多い人はそれらの癌に要注意です。

2011年に世界ではじめて「糖尿病と癌に関する勧告」が米国糖尿病学会と米国癌学会の共同見解として示されました。日本でも2012年末に糖尿病学会と癌学会からの共同勧告が出る予定になっています。

 

ここでは米国の勧告を示します。

1 U型糖尿病では多くの臓器別癌リスクが増加するが、前立腺癌のリスクは有意に低い。糖尿病患者が癌を合併すると非糖尿病患者より予後不良である。

2 糖尿病と癌の関係は高インスリン血症、高血糖、肥満、炎症、糖尿病治療薬など多くの原因が複雑に関与している。

3 糖尿病と癌に関する基礎研究、臨床研究がなお一層必要である。

4 糖尿病患者には癌リスクを考慮した治療選択をする必要はない。

5 糖尿病患者に対しては適切な癌検診を勧めなければならない。

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