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糖尿病腎障害の最近の考え方

 

2013.5.12

糖尿病では種々の合併症を起こしますが、その中で糖尿病腎症については日本透析医学会の報告によると、糖尿病からの透析患者数は2010年には103.820人で1983年は28.8倍に増加しています。糖尿病腎症の最近の話題について、2月に「糖尿病学の進歩」という学会に参加したので報告します。

1つ目は、心臓と腎臓の関係=心腎連関(関連ではく連関と呼びます)についてです。糖尿病性腎症には腎障害の進行度からみた病期分類というのがあり1期から5期の5段階に分かれています。糖尿病性腎症の自然経過は比較的典型的であり、主に微量アルブミン尿・蛋白尿によって病期(ステージ)分類されています。糖尿病発症後5〜10年くらいの経過で、尿排泄量が多量となる過剰ろ過(1期)をへて微量アルブミンが排泄されるようになり(2期)、徐々に尿蛋白が排泄され(3)、腎臓の機能が低下し(4)透析に移行していきます(5)

この、微量アルブミン尿・蛋白尿が出ているということや腎機能が低下していくことが、心血管疾患(心筋梗塞や狭心症など)と関連があるということで「心腎連関」という言葉がでてきました。

すなわち微量アルブミン尿や蛋白尿が出ている人、また腎臓の機能が悪い人は、将来心血管疾患を発症する可能性があるということです。当院では4月から循環器専門医の石井先生が勤務していますので、今までできなかった心臓の検査も可能となってきました。

2つ目は腎臓の病期はよくなる可能性があるという話しです。

外国の研究(UKPDS)では1期・2期・3期・4期・5期の間の進行率はそれぞれ毎年23%程度とされていましたが、日本の研究では(JDCS)微量アルブミン尿期(2期)から蛋白尿期(3)の発症は0.67%/年と海外の結果と比較して緩徐でした。この相違は治療法の進歩や人種差が要因と予測されていますが、緩徐に進行していくわけです。しかし、一方で海外の報告では、糖尿病性腎症を合併した1型糖尿病患者さんを対象に早期から腎症の治療を厳格に行うと2期→1期に改善する確立は約50%、3期→2期→1期に改善する確立は20〜30%と報告しています。(Perkins BAら)

糖尿病もそうですが、腎症も早期から治療を厳格に行うと腎症が改善していく場合があります。

治療は1期から3期までは概ね以下のようになります。

1. 血糖のコントロール(空腹時血糖120未満・HbA1c6.9%未満) 2.血圧のコントロール(130/80未満:蛋白尿1g/日以上の人は125/75未満) 3.高脂血症の是正   4.肥満の改善   5.喫煙   6.食事(蛋白質の取りすぎ・塩分の摂りすぎに注意) 7.薬剤(ARB製剤)

4期になると治療法が少し変わってきます。日本では、20124月から糖尿病透析予防指導管理料が導入され、医師・看護師・栄養士が関わりながら透析に移行しないための指導の徹底が行われるようになりました。当院でも始まっており現在約24人の患者さんの指導にあたっています。

     

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