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「自分だけこないと思うな合併症」

 

2013. 8. 11

糖尿病は症状がないためいつ病気になったか、どの位悪いのかわかりません。しかし糖尿病になってからの期間が長くなり、ヘモグロビンA1cが長期に悪いと様々な合併症が生じてきます。この合併症がみなさんのQOL(生活の質)の低下をまねき、ひいては生命を縮めることとなります。従って当院では糖尿病患者さんの血糖値や合併症防止と管理のために定期検査を行っています。 次に各々の検査の意義をご説明します。

まず糖尿病のコントロール状況を知るために血糖値、ヘモグロビンA1c、尿検査を行います。 血液生化学検査では肝機能・腎機能障害、薬剤の副作用などの確認を行います。動脈硬化予防のためには血糖以外にも血圧やコレステロール・中性脂肪などの脂質管理もしっかり行う必要があります。

微量アルブミン尿は尿蛋白の出る前の早期の腎臓の悪化を示す指標です。この微量アルブミン尿の段階から心臓病によって死亡するリスクが高まることが報告されています。一方では、この段階で減塩、蛋白制限を行い、血糖、血圧をしっかりコントロールすることで心血管病や腎不全を予防することが可能と言われており、アルブミン尿の評価が重要と考えられています。

胸部写真、心電図は肺や心臓の状態を見るために行います。胸部写真では肺炎、肺がんなどの異常陰影および心疾患、心不全の有無を確認します。心電図では狭心症、心筋梗塞などの虚血性心疾患や心房細動などの不整脈を確認します。特に糖尿病患者さんは胸痛などの自覚症状が現れにくく、気づかないうちに心筋梗塞を起こしていることがあります。心房細動は脳梗塞の原因となる不整脈として注目されています。

眼底検査では白内障や糖尿病性網膜症の評価を行います。視力低下は日常生活に支障をきたすため異常がない方でも定期検査が大切です。

歯科検診は歯周病治療のため必要と考えられています。歯周病は糖尿病などの全身疾患に影響を与えることがわかり、治療によりHbA1cの改善効果も報告されています。

その他、動脈硬化の検査として頸動脈エコー、脈波検査(ABI測定)、心エコー、運動負荷心電図検査(トレッドミル負荷)が挙げられます。動脈硬化性疾患(脳梗塞、狭心症、心筋梗塞、下肢閉塞性動脈硬化症)は生命に直接影響するため早期発見、早期治療が重要です。

頸動脈エコーでは血管壁の厚さやプラーク(動脈硬化のかたまり)を観察することで動脈硬化の進行の程度を調べます。脈波検査は両手、両足の血圧測定を行い、下肢動脈のつまり具合や硬さを調べます。特に歩行時に下肢のだるさや痛みを自覚する方は検査をお勧めします。心エコーでは心臓の動きや大きさが正常であるかを評価し心筋梗塞などの心疾患を確認します。運動負荷心電図検査は坂道を登る、急ぎ足で歩くといった日常生活の中で現れる胸痛、息切れなどの症状を再現し、その時の心電図変化をみて狭心症などを調べる検査です。実際には心電図と血圧を測定しながらベルトコンベアーの上を歩きます。

また糖尿病はがんの合併も多いと言われ、スクリーニングとして便潜血を行い、必要に応じて腹部エコー、胃バリウム、内視鏡検査で消化管、腹部臓器の精査を行っています。

合併症の発症や進行を防ぐために、来院時の血液検査、尿検査に加え、合併症予防のためぜひ定期検査を受け健康で長生きできるようにつとめて下さい。

 

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